ライブラリー

「世界」別冊「2015年安保から2016年選挙へ」

岩波の月刊誌「世界」の別冊が届いた。冒頭は志位さんと小沢さんの対談「野党共闘が安倍政治を倒す」。現政権が「最悪の政権」であるという共通の認識にたち、野党共闘と国民の行動について語る。 別冊は菱山さんの「私たちはコールしつづける」という手記、…

「2015年安保 国会の内と外で ―民主主義をやり直す」

前半はSEALDsの奥田愛基氏、弁護士の倉持麟太郎氏、それに参議院議員の福山哲郎氏の鼎談。路上、法曹、議員という3つの視点から捉えられた2015年安保の記録は堅苦しい岩波調を脱していて読みやすく、面白い。 終盤に奥田氏は次のように語る。 『…もっと国会…

『如是経序品』…ツァラトゥストラが菩薩だって!?

これまで、何度か古本を売った。しかし、決して売らず手元の残しているものがある。この本はそんな1冊。メインタイトルは「如是経序品」。お経みたいな書名だけれど、ニーチェの著作を訳したものである。その名は言わずと知れた「ツァラトゥストラかく語りき…

やはり憲法の学習は大事だな C-BOOK憲法を買う

集団的自衛権、戦争法、改憲論議など、今年は憲法とのかかわりを意識することの多い1年だった。 もともと、一般の人が日常生活で憲法を意識することはほとんどない。憲法は国家権力の濫用を制限し、国民の人権を守るためにある、といわれても多くの人は「国…

語学では辞書、では理社の学習に欠かせないものは

英語や国語の学習では辞書を横において参照しながら進めるのがふつう。では理科・社会では? 正解は用語集。教科書や参考書でもいいが、これらは語句を調べるには時間がかかるので、用語集を見てもわからないときに使うのがよい。 自分も、過去問分析のときな…

織田信長に黒人の家来がいただって!?

「詳説日本史研究」(山川出版社)はその書名から受ける印象とは違い、とても読みやすく興味深い内容を含んでいる。ヴォリュームは重要事項が凝縮された高校の教科書「詳説日本史」より多いが、<参考>などに人物のエピソードなどが盛り込まれていて、生きた歴…

「戦争はさせない」(鎌田慧・岩波書店)

新刊書「戦争はさせない」(鎌田慧・岩波書店)の表紙は今年12万人が結集した8.30の国会前デモの画像。自分もこの中にいたんだなあ…と思い出しながらページをめくった。 全4章のうち、書き下ろされたのは第1章の「安倍政権の危険すぎる手口」。これまでのアベ…

「民主主義をあきらめない」 岩波ブックレットNo.937

この岩波ブックレット(No.937)は今年の5月に行われた講演を収録したもの。3人の中で、柳澤氏を知らなかったこともあり、氏の「集団的自衛権はなぜ間違っているか」をとりわけ興味深く読んだ。 2004年から5年ほど内閣官房副長官補として、アベ含め4人の首相の…

「記憶力を持ち続けることが駆動力となる」

「世界」11月号(岩波書店)中の「安保法制からの旅立ち―記憶し、想像し、開かれた民主主義を創り出す」で、山室信一氏はこのように書いている。 「記憶しつづける持続力こそが、権力なき国民にとっての潜在力となる」 「軍事的抑止力に対抗して、本当に平和を…

国際平和の原理も、改正権の範囲外にある

先週、じっくり憲法の本を再読した。テキストは芦部先生の「憲法 第六版」(岩波書店)。平易な文章の中にも高度な知識が凝縮されている、と評価の高い本で、今年の3月、最近の判例を追録した改訂版が出された。 読み進めるにつれ、集団的自衛権の容認をはじめ…

共通の地平が見えてくる…高橋源一郎×SEALDs

今日は「高橋源一郎×SEALDs 民主主義って何だ?」を読んだ。SEALDsについてはその活動を知ってはいたものの、内心では、大して知識もなく気分中心に「にわか結成」された学生の集まりだろう、程度にしか思っていなかった。(SEALDsの人読んでいたらすみません!…

冷静な理論を身につけることが不可欠だ

先週は4日間国会前のデモに参加し、安保法案反対の声をあげた。強行採決阻止はかなわず、少々脱力気味になったが気を取り直し、連休は安保法案や憲法について本を読むなどして頭の中を整理することにした。 まず選んだのが、最近メディアでもよく見かける木…

『福翁自伝』…女性関係については書かれていない

この自伝は福沢が64歳のとき、速記者を前にありふれたメモを用意して語ったものだったという。数十年も前のことをよく記憶しているものである。 自伝には多かれ少なかれ、虚偽や虚飾が含まれるが、『福翁自伝』の内容の真実性は高いと感じる。失敗談にしても…

『米語表現のコツ辞典』…CD収録の会話がおもいろい!

ふつう辞典というと、大量の語句が説明とともに並んでいる無味な内容の本、というイメージがある。不明な言葉を調べるときに使うことが主な目的なので、必要なときしか手にしないのが通常だろう。 ところが辞典にもいろいろあって、書店の辞書コーナーに並ん…

憲法が最も重要で本来的な力を発揮しているとき

館田晶子・北海学園大教授は、こう記している。 「政府が憲法を邪魔だと考え、憲法学者を煙たがるときこそ、憲法が最も重要で本来的な力を発揮しているときだ」 闘いはまだはじまったばかり。

『そんな、諦めたようなことを言ってちゃだめです』

岩波書店「世界」8月号の特集は『「違憲」安保法案を廃案に』。 その中に、6月4日の衆議院憲法審査会で集団的自衛権の行使が意見であることを指摘した、長谷川恭男氏へのインタビュー記事が掲載されている。 『…政府が必要だと考えるのであれば、どんなこと…

「甦る原発プロパガンダ」―流布する「安心神話」

岩波書店「世界」8月号「甦る原発プロパガンダ」―流布する「安心神話」は必読の内容。 「3.11以前から積極的な原発推進派だった読売新聞は、事故直後の一年程度が過ぎると、再び記事の中でも原発推進論を唱え始め、電事連の広告を掲載するようになった…一連…

『裸の大将放浪記』…女性器の俗称もそのまま

放浪の天才画家として山下清の名はよく知られている。以前は芦屋雁之介が演じるテレビドラマも放映された。彼のよく使った『兵隊の位で言えば…』などの科白をご記憶の方も多いに違いない。 この本を通信販売で買ったのは大学生のとき。新聞広告を見て興味を…

「新松島物語」…。「松島や ああ松島や…」は芭蕉の句ではない

地元・塩釜に育ち、産経新聞の記者として長年取材活動に携わってきた小川澄夫の執筆。「松島の島はいくつ?」「アインシュタイン松島へ」など76編からなる興味深い内容が豊富な歴史資料に基づいて書かれている。写真も多く、郷土資料としても価値がある。…

『女の一生』…中盤からが面白いモーパッサンの作品

モーパッサンの『女の一生』は中盤からが面白い。ジャーヌがジュリアンと結婚しコルシカ島へ新婚旅行に行くまでは大して面白くはなかったのだか、下女で乳姉妹のロザリが出産するところから次第にこの作品に引き込まれていく。 息子のポルが学校に上がると、…

『太陽のない街』…昔はストでよく電車が止まったものだがね

徳永直の『太陽のない街』は、いわゆるプロレタリア文学に属する作品として知られている。文学全集ではこのジャンルに属する作家をまとめて一巻にしていることが多い。 この作品は文選工、植字工としての経歴をもつ作者が、印刷会社での労働争議を描いたもの…

『燃ゆる灰』…アニー・ハズラムの歌声は何ともピュアだなあ

このアルバムを聴いた大学生時代。もちろんLPレコードで、たしか大学生協のレコード・フェアで手にしたと記憶している。 ヴォーカルのアニー・ハズラムの歌声はピュアでメランコリック。初めて耳にしたとき、液体が体全体に溶け込むような感覚を覚えた。 歌…

『ジョージ・ハリスン帝国』…彼女の名は「フジコ」だった

このアルバムをもっともよく聴いたのが浪人時代。代ゼミ原宿校と自宅を往復するだけの超マジメ生で、唯一の息抜きが音楽だった。英文解釈の復習などを終えると、LPを取り出してプレーヤーにかけた。 そんな中の1枚がコレ。耳にすると、予備校の教室の映像と…

『詳解ラテン文法』…アモー、アーマス、アマート、アマームス…

大学3年になって専門課程に上がるとき、僕はなぜか他学部の科目であったラテン語を選択した。卒業の単位数には勘定されない自由選択科目の一つとして選んでみたのだった。 ラテン語を学習している、というと何かすごくアカデミックで高尚な学生のような気分…

『サロメ』…R.シュトラウスで好きなのは「祝典前奏曲」のほう

ワイルドの『サロメ』(岩波文庫)は、文庫本で本文が100ページにも満たない大変短い戯曲である。1891年に書かれた作品というから、すでに110年以上の年月が経過していることになる。 作品の紹介には、幻想の怪奇と文章の豊麗さによって知られる世…

『エミール』…ほんとうの教師は父親である。これはある意味本当

ルソーの著作の中で『エミール』はもっともよく知られている作品だろう。実際に読んでみると大変面白い。第一編から含蓄のある話が次々に出てくる。 「ほんとうの教師は父親である……世界でいちばん有能な先生によってよりも、分別のある平凡な父親によってこ…

『白鯨』…この本を見るたび、竜田揚げが食べたくなる

作者メルヴィルはアメリカ生まれ。『白鯨』は十九世紀の中ごろに書かれた。まず冒頭に語源部として鯨の語源の話が少しあり、次に文献部としてさまざまな作品から鯨に関しての記述が抜き書きされている。引用している作品も作者も、大半は知らないものばかり…

『アラブ飲酒詩選』…朝起きたら、まず酒を飲め

アブー・ヌワース『アラブ飲酒詩選』(岩波文庫)はなかなかユニークな内容。作者はアラブ世界では著名な詩人の一人だそうである。アッバース朝最盛期に活躍したという。この本には飲酒詩を中心に、恋愛詩などが60程集められている。 解説には酒の詩人とし…

『哲学者に訊け!』…ラブホテルとサルトル、セクハラと孔子

タイトルは堅苦しいが、中身は男の遊び方の指南書のようでもある。一つの項目に一人の思想家を充てているのが特徴。たとえばデリヘルとヘーゲル、ラブホテルとサルトル、セクハラと孔子、出会い系サイトとデカルトといったように、まず普通の人間なら結びつ…

『空騒ぎ』…ベネディックはすごく個性的だよなあ

シェイクスピアの作品には、一つの戯曲中にいくつもの筋が含まれていて、それらが巧く結びついているものが多い。 『空騒ぎ』もその例外でなく、(1)ヒーロー&クローディオー、(2)ベアトリス&ベネディック、(3)ドグベリー&ヴァージズの三つの筋で…