「浮世草子集」(日本古典文学全集65)

51PFR2A7T0L__SX336_BO1,204,203,200_

古典文学全集(旧版)の収録作品は、夜食時分(随分とふざけた名である)の『好色敗毒散』と江島其碩の『浮世親仁気質(うきよおやじかたぎ)』の2作。その後に買った岩波大系には夜食時分『好色万金丹』、江島其碩『傾城禁短気』と、それぞれ違う作品が収められている。

違う作品が読める点はありがたい。『好色敗毒散』の後半、巻之四の第一「店卸し」は今でもよくある遊びたい盛りの孫の話。子息がくるわ遊びを始めようとするが、諌めるどころか家の財産を計算して遊び代を渡す。

「総じて若い者の悪所に遊ぶ事珍しからず。これを折檻する事いつかうなるゆゑ、結局逆馬(反対の行動に出ること)になりて……」(日本古典文学全集37『仮名草子集・浮世草子集』)

この孫源次郎はどうしたか。

「……たれはばかる事なく通いしが、この里は人目を忍び、首尾を求むるにてこそおもしろきに、あまり打ち晴れたる遊びに、拍子抜けして、結句をかしからず。」(同書)

月給取りのころ、外勤のついでにしばしば川崎競輪場に行った。人が真面目に働いている間に仕事をサボって競輪場で遊ぶことは大きな快楽であった。人目を忍んで遊ぶ楽しさは究極の快楽といえよう。