「チャップリンとヒトラー」大野裕之/岩波書店

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本書に掲載されている映画『独裁者』の結びの演説文の中にこんな箇所がある。

「…力を会わせて、新しい世界のために闘おう!人々に仕事の機会を与え、若者に未来を、老人に保障を与える立派な世界のために。 けだものたちもそんな約束をして権力に上り詰めた。だが、彼は嘘つきだ! 彼らは約束を守らない。絶対に守ろうとしない。独裁者たちは自分たちを自由にし、民衆を奴隷にする…」(「チャップリンヒトラー大野裕之岩波書店)

この一節は、まさに日本の現状にピッタリではなかろうか。 筆者は最後のほうで次のように述べている。

ヒトラー的なものに対抗するには、その愚直さとユーモアしかないことを『独裁者』は教えてくれる。」(p.260)

現政権に対峙するには、笑いやユーモアも強力な武器となりうるはずである。4日違いで生まれた二人の「メディア戦争」のみならず、『独裁者』に関する逸話などもふんだんに取り入れた、読み応えある1冊。