『裸の大将放浪記』…女性器の俗称もそのまま

放浪の天才画家として山下清の名はよく知られている。以前は芦屋雁之介が演じるテレビドラマも放映された。彼のよく使った『兵隊の位で言えば…』などの科白をご記憶の方も多いに違いない。

この本を通信販売で買ったのは大学生のとき。新聞広告を見て興味をもち、すぐさま注文した。全部で4巻あり結構高価だった記憶がある。届くやいなや読んでみるとこれが大変おもしろい。見たまま思ったままを何らの脚色なく文字に置き換えているからである。

原文は句読点がなくビッシリと書かれて読みにくいことから、本には句読点が入っているが、女性器の俗称も無修正(!)。作者の強烈な個性に圧倒される。

『僕はアイスの夜明かしをやって昼から夕飯まで寝ます』というタイトルを見ただけでも、これはフツウの手記でないことを推し量ることができよう。山下清の花火の絵は何度か見たが、この放浪記はそれにも増して読む者に大きな感銘を与える。

ぎすぎすした現代にはないあたたかい人間関係を感じるのは自分だけではないだろう。