『太陽のない街』…昔はストでよく電車が止まったものだがね

0610

徳永直の『太陽のない街』は、いわゆるプロレタリア文学に属する作品として知られている。文学全集ではこのジャンルに属する作家をまとめて一巻にしていることが多い。

この作品は文選工、植字工としての経歴をもつ作者が、印刷会社での労働争議を描いたものである。筋の経過を多面的に追う作品で芸術性は薄い。ストライキを題材にしている割には鬼気迫る描写はあまりない。

作品中に争議とか検束という語が数多く登場する。検束についてはもちろん、争議という語についても現在では紙面で見ることはほとんどなくなった。

ストライキで鉄道が止まったのは過去の話である。今となっては国鉄時代の春闘が懐かしくさえある。深夜に及ぶ労使交渉、公労委による斡旋や調停、ベタベタと檄ビラが貼られた車両、順法闘争、そしてストライキ

明日電車は動くのかスト突入か、交渉は深夜に至ることもしばしばで、翌朝が楽しみだったものである。高校通学当時、私は労働組合を応援した。スト突入で休めるという単純な理由からであった。