『サロメ』…R.シュトラウスで好きなのは「祝典前奏曲」のほう

サロメ

ワイルドの『サロメ』(岩波文庫)は、文庫本で本文が100ページにも満たない大変短い戯曲である。1891年に書かれた作品というから、すでに110年以上の年月が経過していることになる。

作品の紹介には、幻想の怪奇と文章の豊麗さによって知られる世紀末文学の傑作、とある。確かにその雰囲気はあるが、個人的にはいまひとつ。訳文の影響もあるだろうか。

1905年にはリヒャルト・シュトラウスがドイツ語訳を楽劇化して成功をおさめた、と巻末の解題にある。さっそく「ベーム/R・シュトラウス名演集」を出して「サロメの踊り」(楽劇・サロメ作品54から)を聴いてみる。

CDには4作品収められている。好きなのは実はサロメではなく、最初に収録されている作品61「祝典前奏曲」である。140人を超える大編成のオーケストラとオルガンの音の洪水が、恍惚たる気分にさせてくれる。