『アラブ飲酒詩選』…朝起きたら、まず酒を飲め

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アブー・ヌワース『アラブ飲酒詩選』(岩波文庫)はなかなかユニークな内容。作者はアラブ世界では著名な詩人の一人だそうである。アッバース朝最盛期に活躍したという。この本には飲酒詩を中心に、恋愛詩などが60程集められている。

解説には酒の詩人として李白オマル・ハイヤームを挙げている。陶淵明など酒好きは他にもいる。彼も「閑情の賦」などの恋愛詩を残している。この二つのテーマの詩は割と作りやすいかもしれない。

詩は読みやすい。「マーリクよ、朝起きたら、まず酒を飲め」「盃と少年があれば、私はこの世に満足」など、少々共感しがたい内容も含まれている。作者は素行が悪く何度も投獄された。放蕩三昧の生活だったようで、人生訓や人生哲学の読み取れる詩はほとんどないのが特徴である。

詩というと畏まって朗読、というイメージがあるが、この詩は酒でも飲みながら読むのに適した、肩の凝らない作品。けっこう好きだな。