『哲学者に訊け!』…ラブホテルとサルトル、セクハラと孔子

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タイトルは堅苦しいが、中身は男の遊び方の指南書のようでもある。一つの項目に一人の思想家を充てているのが特徴。たとえばデリヘルとヘーゲル、ラブホテルとサルトル、セクハラと孔子、出会い系サイトとデカルトといったように、まず普通の人間なら結びつけることのないような両者を、紅茶にミルクを混ぜるかのごとく自然に溶け込ませているのである。

著者は大真面目に「プレイの興奮と快感は弁証法的に高まる」(第15章ヘーゲル)などの命題を示していく。もちろん、それぞれの思想のエッセンスやキー・フレーズも随所に挿入されていて、これまで無縁だったであろう大思想家も急速に自分に接近してくる。

ただその理屈の部分はやはり世俗話題とは混ざりきれてはいない(ミルクティーにさらにレモンを混ぜるかのよう:レモンはうまく解けないので凝固する)ので、この箇所にくると感覚が素に戻ってしまうのはこの手の融合の限界といえなくもない。

それはともかく、もしかしたら上の項目を見て「あれっ!」と思った方がおられるかもしれない。実は本書はかつて「月刊PLAYBOY」に「哲学者に学べ!大人のプレイボーイ養成講座」という題で連載されたものを1冊にまとめたものである。内容のほとんどが大人の遊びや恋愛テクニック関連であるのもそのためだ。

したがってこの本はおよそ男性向けといってもいい。結構キワドい記述やイラストもあるので、いくら哲学に興味があるといっても小中学生には刺激が強すぎる。ただ、男性の心理を理解するには女性が読んでもいいかもしれない。

項目は全部で26。テレクラと純正風俗であるピンサロが抜けているのがやや不満だが(意図的なのかどうかは不明)、内容の面白さは保証。自分の経験と照らし合わせつつ、しばしば笑みを浮かべる読者の姿を想像してしまうな。