『直感でわかる数学』…積分を先に勉強するだって!?

無題

ちょっと自慢みたいになってしまうが、小学校のころから算数は得意な科目だった。なぜかは分からない。野球ばかりして遊んで本などまともに読んだこともなかったから国語や社会の成績はいつも悪かったのだが、なぜか算数だけは好きで成績もよかった。

これは中学、高校に進学しても変わらず、文系だったにもかかわらず試験科目に数学のある大学を選択したくらいだった。そんなこともあって、数学には嫌悪感やマイナス・イメージをもったことは一度もない。

さて、本書には「直感でわかる」という数学の本としては珍しい修飾語が付されている。書いたのは畑村洋太郎(専門は機械工学)という人で、ずっと以前からこの種の本を書こうと考えていたのだそうである。

本を開いて読み始めると、これが止まらない。数学嫌いな読者も飽きさせないよう「蛇足」を入れたりしながら三角関数対数の本質を説明していく。とにかく図とイラストが多いのでそれだけでも読みやすい。複素数微積分、微分方程式などの、言葉を聞いただけでも身構えるようなところも、スイスイと読めてその考え方がスッパリと頭に入ってくる。

私は数学が得意と書いたが、この本に書かれていたような基本的な考え方をそれこそ「わかって」いたのではなかった。ただ与えられた問題が解けただけだったのである。この点について筆者は教科書や学校での教え方にも疑問を投げかけている。

私たちはまず微分を学び、次に積分に進んだが、筆者は先に積分から学ぶべきと断言する。その通り、もう20年以上も数学から遠ざかっていた私にもこの積分微分の説明は実にすんなりと頭に馴染むものだった(116ページと117ページの4つのグラフは出色!)。

また筆者は巻末で、ものを考えるということについて「論理を組み立てていくことではなくて、その人の直感や経験、勘といったもので、うまく合致するテンプレート(人の頭の中にある脈絡みたいなもの)を探す」ことだと述べている。こんなことは大学受験まで数学を勉強していて一度も聞いたことはなかった。

一気に読んでしまった私は、あらためて数学への興味が掻き立てられた。この本を手にする人の多くはおそらく、自分のようにこの科目に対する違和感のない、あるいは少ない人ではなかろうか。筆者は数学を苦手とする人にも読んでもらいたいようだが、さてどうだろう。