「嵐山」の間狂言で猿が「きゃあきゃあきゃあ」

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昨日の国立能楽堂・定例公演は狂言が「見物左衛門」で能が「嵐山」。どちらも過去に見たことがなく、楽しみな演目だった。狂言のほうは登場人物がただ一人という珍しいもの。他には「独り松茸」ぐらいしかない。謡では独特のしゃがれ声が少し辛そうに聞こえた野村万作だったが、味わい深い芸は変わらず。

「嵐山」は間狂言のほうが目あてだった。小書きがついていなければシンプルな脇能なのだけれど、今回は「猿婿」つき。前シテが下がると、猿がトータルで9匹登場する異色の光景。狂言師が演じる猿らの台詞のあとには鳴き声の「きゃあきゃあきゃあ」が付くので、そのたびに見所からは笑い声が漏れる。

その間、地謡方などが下がることはないので、野村万斎ら和泉流地謡が5人加わった時点では後見も入れて31人が舞台に居合わせたことになる。リアルな動きもまじえた猿らの祝言らしい賑やかな間狂言のあと、二人の後ツレの合舞、後シテ・蔵王権現の登場と続く。猿らの滑稽さが消えたあとだけに、明神・権現は余計に引き立ったように思う。

開演直後の真次第を耳にして、今日は何かちがうなという予感がしていた。囃子のみならず、若手のワキも引き締まっていて満足のいく舞台であった。ただ、この日は中正面8列13番という、いつもの20番台からかなり外れた席。目付柱のために悔しい思いをする場面はあったが、観ることができたのは幸いだった。正面で見とけばよかったかな…少し後悔。