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ライブラリー

『太陽のない街』…昔はストでよく電車が止まったものだがね

徳永直の『太陽のない街』は、いわゆるプロレタリア文学に属する作品として知られている。文学全集ではこのジャンルに属する作家をまとめて一巻にしていることが多い。 この作品は文選工、植字工としての経歴をもつ作者が、印刷会社での労働争議を描いたもの…

『燃ゆる灰』…アニー・ハズラムの歌声は何ともピュアだなあ

このアルバムを聴いた大学生時代。もちろんLPレコードで、たしか大学生協のレコード・フェアで手にしたと記憶している。 ヴォーカルのアニー・ハズラムの歌声はピュアでメランコリック。初めて耳にしたとき、液体が体全体に溶け込むような感覚を覚えた。 歌…

『ジョージ・ハリスン帝国』…彼女の名は「フジコ」だった

このアルバムをもっともよく聴いたのが浪人時代。代ゼミ原宿校と自宅を往復するだけの超マジメ生で、唯一の息抜きが音楽だった。英文解釈の復習などを終えると、LPを取り出してプレーヤーにかけた。 そんな中の1枚がコレ。耳にすると、予備校の教室の映像と…

『詳解ラテン文法』…アモー、アーマス、アマート、アマームス…

大学3年になって専門課程に上がるとき、僕はなぜか他学部の科目であったラテン語を選択した。卒業の単位数には勘定されない自由選択科目の一つとして選んでみたのだった。 ラテン語を学習している、というと何かすごくアカデミックで高尚な学生のような気分…

『サロメ』…R.シュトラウスで好きなのは「祝典前奏曲」のほう

ワイルドの『サロメ』(岩波文庫)は、文庫本で本文が100ページにも満たない大変短い戯曲である。1891年に書かれた作品というから、すでに110年以上の年月が経過していることになる。 作品の紹介には、幻想の怪奇と文章の豊麗さによって知られる世…

『エミール』…ほんとうの教師は父親である。これはある意味本当

ルソーの著作の中で『エミール』はもっともよく知られている作品だろう。実際に読んでみると大変面白い。第一編から含蓄のある話が次々に出てくる。 「ほんとうの教師は父親である……世界でいちばん有能な先生によってよりも、分別のある平凡な父親によってこ…

『白鯨』…この本を見るたび、竜田揚げが食べたくなる

作者メルヴィルはアメリカ生まれ。『白鯨』は十九世紀の中ごろに書かれた。まず冒頭に語源部として鯨の語源の話が少しあり、次に文献部としてさまざまな作品から鯨に関しての記述が抜き書きされている。引用している作品も作者も、大半は知らないものばかり…

『アラブ飲酒詩選』…朝起きたら、まず酒を飲め

アブー・ヌワース『アラブ飲酒詩選』(岩波文庫)はなかなかユニークな内容。作者はアラブ世界では著名な詩人の一人だそうである。アッバース朝最盛期に活躍したという。この本には飲酒詩を中心に、恋愛詩などが60程集められている。 解説には酒の詩人とし…

『哲学者に訊け!』…ラブホテルとサルトル、セクハラと孔子

タイトルは堅苦しいが、中身は男の遊び方の指南書のようでもある。一つの項目に一人の思想家を充てているのが特徴。たとえばデリヘルとヘーゲル、ラブホテルとサルトル、セクハラと孔子、出会い系サイトとデカルトといったように、まず普通の人間なら結びつ…

『空騒ぎ』…ベネディックはすごく個性的だよなあ

シェイクスピアの作品には、一つの戯曲中にいくつもの筋が含まれていて、それらが巧く結びついているものが多い。 『空騒ぎ』もその例外でなく、(1)ヒーロー&クローディオー、(2)ベアトリス&ベネディック、(3)ドグベリー&ヴァージズの三つの筋で…

『革命と反乱』…ハゲもいればデブもいる

30年以上前の話。元ユーライア・ヒープのケン・ヘンズレーがブラックフットに加入したというニュースをロック音楽誌で知った。「ブラックフット?」実をいうとこの出来事を知るまでこのバンドの曲を聴いたことがなかった。 「革命と反乱」のLPは1983年に発売…

『ブッシュ妄言録』…英語の勉強にもなるユニーク本

原題は"Amazing words of George W. Bush, the 43rd president of the United States"。 ブッシュの言行を扱った本はいろいろあるが、その中でも無知や誤りを露呈した発言をまとめたものである。訳だけでなく<実際の発言>として英語も掲載されているので、…

『SとM』…失われた絶対者へのノスタルジーだとさ

タイトルだけを見て興味本位でこの本を開いた人は、その内容に落胆するかもしれない。いわゆる具体的なプレイなどの「実践的」なことが書かれていないからである。本書は文学者による真面目なSM研究なのだ。 SMとのかかわりはヨーロッパ史、キリスト教となど…

『人生哲学入門』…寝転がっても読める堅苦しくない哲学書

好きな方の書棚には、少なくとも1冊は哲学に関する本が並んでいることと思う。それはカントやニーチェなどの思想の概説書であったり、あるいは西洋哲学史であったりすることだろう。 まあふつうは「哲学とは」とか「哲学入門」というような本だろうが、これ…

『オー・ヘンリー傑作集』…独特のユーモアとペーソス

272の全短編から20の作品が収められている。有名なのは『賢者の贈りもの』で、たしか中学校時代に英語のテキストに載っていたことを記憶している。 オー・ヘンリーの作品の特徴として、独特のユーモアとウイット、ペーソス、そしてそれを効果的に伝えている…

『英文法TRY AGAIN!』…最後まで読めること請け合い

英語を聞いたり読んだりするのに比べて文法を勉強するのは大変骨が折れるものである。しかし正しく英語を理解するためには文法の学習が欠かせない。よく引き合いに出される「Father mother Asakusa go」でも相手に意思は伝わるがやはりちゃんとした英語を使…

『彼岸過迄』…生気を消してゆくような芸術という批評も

正直言って後味のよくない小説である。読み進めるうちに頭が重くなる。巻末の解説に武者小路実篤の「如何に甘くかけていても漱石氏のようなじめじめした、生気を消してゆくような芸術を自分は愛することはできない」という批判が紹介されている。 じっさい須…

『生活の探求』…リョーヴィン的な人物がいいね

島木健作の「生活の探求」はいわゆる転向文学作品ということになっている。かような背景に無知であった私は筑摩書房本で島木の作品を虚心に楽しんだ。 杉野駿介は何かプロレタリア運動をしていそうで、何らの活動も読み取れない。彼の旧友との接触も不可解で…

『直感でわかる数学』…積分を先に勉強するだって!?

ちょっと自慢みたいになってしまうが、小学校のころから算数は得意な科目だった。なぜかは分からない。野球ばかりして遊んで本などまともに読んだこともなかったから国語や社会の成績はいつも悪かったのだが、なぜか算数だけは好きで成績もよかった。 これは…

『ヘンリ・ライクロフトの私記』…カタルシスだなあ

本書はイギリスの片田舎に移り住んだ男の自伝という形をとる作品。春夏秋冬の四篇からなる。季節の情景を描いた記述の中に、自分の過去話や、文学、思想、信仰、はては料理の話などが盛り込まれている。 解説の言葉によれば、この作品は、季節の移り変わりを…

『虹を翔ける覇者』…B面の大作2曲はHRの傑作だ

この「虹を翔る覇者」は1976年に発売されたもので、原題は「RISING」。僕が高校2年生のときに発売された。当時バンドをやっていた級友がレコードを教室に持ってきたのをよく覚えている。 ジャケットの中央には虹を掴んだ拳が描かれていて、その印象的な絵柄…

『世界の十大小説』…モーム自身の作品も傑作だ

上下巻の2冊で取り上げている小説は、 『トム・ジョーンズ』 『高慢と偏見』 『赤と黒』 『ゴリオ爺さん』 『デイヴィッド・コパーフィールド』 『ボヴァリー夫人』 『モウビー・ディック』 『嵐が丘』 『カラマーゾフの兄弟』 『戦争と平和』 10選ぶとす…

『三島由紀夫全集第41巻』…三島の英語を聞くことができるゾ

この第41巻は7枚のCDからなる。聞いたことのある三島由紀夫の声といえば、多くの人がまず思い起こすのが、自決した日にバルコニーから発せられた演説の声かもしれない。この巻では、そんな三島の肉声をたっぷりと味わえる。 7枚目に収録されている英語で…

『芥川龍之介の読書遍歴』…読む速さは超人的

芥川龍之介は多読、速読の作家として知られている。本書を読むと、凡人とは比較にならない読書習慣を知ることができる。内容は大半が芥川の読んだ書物を並べた読書年表で、前半の「読書人生」以外は読むところはない。どちらかというと研究者向けの資料集だ…